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ゴスロリ再考

ドリーミー・クリスマスにかまけているうちに、世界は動く。
ダニエル・ハーディングがなぜか日本にいて、金聖響の代振りをしたり(――なんて豪華な“代役”!!)、エンリコ・オノフリ指揮のヘンデル・フェスティヴァルがひと月後に迫ったりしていたり。
クラシック音楽界にもニュースは多いが、「乙女のクラシック」がフィーチャーしたのはこれ。

鬼才の愛する女の子(週刊新潮12月13日号)

鬼才は映画監督ティム・バートン
女の子たちは、「ゴシック&ロリータ」界で知らぬ者のないアイドル、ネオ・クラシックユニット「黒色すみれ」である。
http://www.kokusyokusumire.net/

 
■正しい乙女の為のクラシック!?
「わー、私としたことが、知らなくてごめんなさい!」
と言いたくなるほど、本気で「ネオ・クラシック」、そして「乙女」だ。
2人の少女(自称14才)の名は:
ゴスロリ雑誌のカリスマ読者モデルのさち[ヴァイオリン]
作詞作曲を手がけるゆか[ヴォーカル&アコーディオン]
それぞれ国立音大とフェリス女学院を卒業後、“伝説の名曲喫茶スカラ座で出会い、2003年にユニットを結成したという。
2006年には新宿ゴールデン街に、“正しい乙女の為の喫茶店「すみれの天窓」”をオープンし、バートン監督もお忍びで駆けつけた。
すでに3枚出ているアルバムは、“クラシック、シャンソン、日本歌曲や大正ロマンを基調”にしているそうで、うーん…聴くとわかるけれど、そこにヴィジュアル系のパンクロック(風)と椎名林檎を足したような。
ひとことで言うと「ゴスロリ」系である。

ただ「カリスマミー・デジタル写真館」のように、クラシック作品ならヘンデルやバッハをとりあげるのが興味深い。*1
ロリータ、ゴーズ・バロック
以前「ゴスロリ版古楽入門」に書いた音楽世界を、本当に実践している人たちがいたのだから。

アキバ系が売りのyumiは知っていたのに、私がなぜ彼女たちを知らなかったかといえば、おそらく音楽が「クラシカル・クロスオーヴァー」でなく、「ヴィジュアル系ロック」にカテゴライズされていたから。*2
しかしながら、クラシックの勉強をしていたからクラシックを“手段”にしただけで、彼女たちにとってカテゴライズはあまり重要でないように思える。
その言葉を借りれば、

それらに敬意を持ちつつ自分なりの「宝物」を作っている。
素敵なもの、可愛いもの、綺麗なものにいつも囲まれて生きていたい。


この考え方はまさに乙女のアイデンティティのようなもので、共通項だが、逆に「宝物」は十人十色ある。
彼女たちの音楽をして、「これが乙女系です」と言うことはできない。
「乙女とは?」
まで話を広げるとえんえん続くので、今回はあくまでその1ジャンルとしての「ゴスロリ」の話である。

 

■ゴシック&ロリータ
日本では「ゴス」とひとくちに言っても細やかな背景がある。

1)ロリータ
70年代末、インディーズのライヴハウスに集まる少女たちが率先して着始めた、少女趣味で幼い感じのファッションの総称。
もちろん「ロリータ」は、ナボコフの同名小説からきたもの。
時を経て同性からも異性からも嫌われるファッションの代表格になったため、現在の「ゴスロリ」もこのイメージで誤解されている面が大きい。

2)ゴシック・ロリータ
1の亜流として90年代末から登場したファッション。
モノトーンの恐ろしげなゴシックモティーフと、ロココのフリルの融合。
エドガー・ポーやブラム・ストーカーの流れを汲むゴシックロマンや澁澤等を好む文系と、70年代末イギリスのバンドBAUHAUSを筆頭に、マリリン・マンソンまで続くゴシック・ロック(+その上澄み)に熱狂するパンク系がいる。

3)和装版ゴシック・ロリータ
2のうち和物志向が強い人は、大正ロマン風のおしゃれキモノや日本歌謡曲のブームの一端を担っている。
好きなのは乱歩、中也、尾崎翠など。
おそらく「黒色すみれ」のファン層もここ?
 
4)スウィート・ロリータ*3
2のファッションをロココに特化させた甘いルックス。ピンクが基調。
世界名作劇場やブロンテや「ベルばら」、高橋真琴バイブルか。
音楽はニューロマンティックグラム・ロック、その上澄みであるヴィジュアル系
プリンセス系クラシックの少数派もいるかも。
私がなかよくしたい人たち!

5)どれにもあてはまらない追随者

以上のような文化的背景を持つ「ゴスロリ」だが、10代特有の「自我」の過剰なアピールや、社会や伝統への反抗の表現である場合も多い。
また、「ゴスロリ」同士でも、「あの子は澁澤読んでないから私たちとは違う」というような、基本教養によるクラス意識がみられるのだそうだ。


■フランスでの人気
今回の週刊新潮の記事は、「黒色すみれ」が11月末に行ったフランス・ツアーのグラビアを大きくとりあげている。
アイルランドから足を運んだファンもいるそうで、YouTubeなどを覗くと、出るわ出るわ、ほとんど横文字。フランスのパフィー状態である。
近年アメリカ以上に目立つ、フランスでの“ジャパン・マニアック”(日本人気、オタク人気)だが、これが「ゴスロリ」になると昨年あたりから空前のブームであるらしい。
http://www.youtube.com/watch?v=vbjBYQXjBZE
これは純粋に80年代からのアニメ、マンガ人気の影響*4+エキゾチズムが原因のようだが、フランスの「ゴスロリ」の主張たるや、とても14才とは思えない。
ここはお国柄。
しかし終盤、
「夢の国への切符は片道でなくては」
と語る彼女に、おなじみの独特のエスケーピズムを感じるだろう。
少女たちの閉塞感と親の戸惑いは、世界共通なのだ。 

Gothlolic-ゴスロリック-

Gothlolic-ゴスロリック-

  

*1 ヴァイオリンのさちは、“ロリータ・ファッションに身を包んだ異色のヴァイオリニストSachi”としてソロ・デビュー&カウンターテナー湯澤幸一郎とのデュオ、“セロ弾き”青月泰山との弦楽デュオの活動も行っている。

*2 とはいえ、渋谷の公園通りクラシックのようなイベントにも毎年参加している。

*3 以前「ほんの少しの毒(リアル)を!」と書いたように、私の理想はこのスウィート・ロリータに知性と客観性(=男の子目線も含む)をもたせた「ガーリィ」と呼ばれるカルチャー。

*4 フランスは世界第2位のマンガ消費国。

 
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