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英国レディがゆく ~オーストラリア編

ロンドンに暮らす英国レディにとって、オーストラリアははるか遠くの野蛮な世界だ。
下層階級と同じ粗野な言葉を話す、荒くれものの金鉱掘りや牧童たち。
偏見は、事実上の独立を果たした1930年代でも変わることはない。
それでもレディ・サラ・アシュレイ(ニコール・キッドマン)は夫を追い、第二次世界大戦を目前に控えたオーストラリアにのりこんだ――
 
オーストラリア出身のバズ・ラーマン監督が、最新作にこめたテーマは「変容」。
同郷のニコール・キッドマンヒュー・ジャックマンをキャストに迎え、ひとりの英国女性がオーストラリアという大自然に足を踏み入れたことからはじまる壮大なアドベンチャー・ロマンスを描いている。
その壮大さ、アボリジニの差別問題(白豪主義)という重いテーマに尻込みしていたが、なんのことはない、やはりバズはバズ。
意外と知らないオーストラリアの歴史(=リアル)をきっちり描きこみながら、非現実なほど美しい、絵に描いたような大自然や美男美女によるロマンス、そして音楽(=ファンタジー)で、今回も酔わせてくれた。

先住民アボリジニの存在は美しく神秘的に描かれ、この作品のテーマの大きな一角を担っている。
アボリジニにとって「歌」は対話であり、魔法でもある。
レディ・サラと混血の少年ナラ(上写真)の、コミュニケーション・ツールもまた、「歌」であった。
母を亡くした少年に、サラは当時のヒット・ソングである「虹の彼方に」を歌うのだが、この旋律は、サラのテーマであるJ.S.バッハカンタータ「羊はやすらかに草を食み」と絡み合うようにして、なんども登場する。
ふたりの絆である。
ナラが旅立つ幕切れで、サラがつぶやくのが、
「耳をすませているわ」
であるのも象徴的だった。
やっぱりバズは“わかっている”とおもったゆえんだ。 
 
“わかっている”のはロマンスのシークエンスも同様。
モチーフが『風とともに去りぬ』なのは、野性的なカウボーイ、ドゥローバーの登場時の「いやなやつ!」っぷりでも明らかなのだが、ジリジリと変化する関係性、中盤の雨のなかのキスとそれにつづくラヴシーンのどうしようもない清潔感、みずからの変化にとまどうサラのモヤモヤに、バズの「乙女回路」を確信するに至ったのである。
 「好きなひとに好かれたい」
とはだれもが経験する感情だが、この映画でサラが経験する変化は、ドゥローバーに好かれたい、好みに合わせたいという単純なものではない。
愛するひと(もの)に寄り添うために、また、寄り添っているうちに当然のように起こった変化。
ふたつは似ているようで、まったく違う。

関係性のなかで起こる自然な変化のなかでは、相手は自分が変化する目的ではなく、新しい自分への出発点になる。
自分中心だった人生が、だれかのために生きる人生に変わっていく。
変化ではない、「変容」。
『オーストラリア』で描かれているのは、まさにそんな愛なのである。
 
 
  
http://movies.foxjapan.com/australia/

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