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終わったあとの世界


不毛地帯』 第一話。
5年前の『白い巨塔』を彷彿とさせる重厚な演出、きちんとした俳優たち、それだけでわりと満足してしまった。
唐沢寿明の演技がすきなだけかもしれない。

いやむしろ、終戦直後という時代がすきなのかもしれない、ともおもう。
主人公の壹岐正は大本営参謀のエリート軍人であり、終戦後、天皇の戦争責任を否認しつづけたため戦犯としてソ連軍に抑留、シベリアの強制収容所での過酷な労働を強いられる。

戦争の加害者であり、被害者でもある彼らは、特異な存在だ。
間違っていることを認めるわけにはいかない、という壱岐のことばには、彼のまっすぐな人柄と同時に軍人としての誇りがにじみ出ている。
ある者は誇りのために死を選ぶ。
ある者は誇りを捨てて変節する。

敗戦国だからといって主張を曲げない、という意味では、白洲次郎に通じるものもある。
たしかに壱岐は、山崎作品ではサブキャラになりがちのピュアでストイックな男であり、そんな男が主人公の『不毛地帯』は、山崎作品中もっともヒーローもの度が高い。
そんなヒーローに友人は言う。
「戦争は終わったが、われわれはまだ終わっていない。
われわれには、終わったあとの世界を見届ける責任がある」
  
 
先だってのインタビューで空知英秋は、銀魂の世界を「攘夷戦争後」にしたことに対して、武士道を描くとなればそれが成立しえない世界のほうがいい、と答えていたが、同じことが言える。
終わったあとの世界、成立しえない世界、それが「不毛地帯」である。
そこでは、もうカッコつけてる場合じゃないのだけど、それでもカッコつけて生きていく。
銀さんも次郎さんも、そこがカッコイイ。
そこにこそ、価値がある。

その点では壱岐は、わたしにはまじめすぎる。
主人公が悩み、時に挫折し、葛藤しながらも、次々と現れる難題に果敢に挑んでゆく姿は、必ずや見るものに勇気を与える――ということなのだろうが、読んでいてイライラするのである。
ドラマ版『華麗なる一族』の万俵鉄平もそうだった。
あれは本来、父・大介の話なのだ。

わたしはなんといっても財前五郎派である。
ずば抜けた才能、自信家で目的のためなら手段を選ばない男、財前。
ザ・肉食男(その分内面はもろい!)。
  
 
不毛地帯』にも有望株はいて、兵頭信一良には注目。
竹野内豊を久しぶりに見たが、いいかんじにやさぐれていてよかった。
坂本龍一の音楽がセンチメンタルすぎるのを心配していたが、プロコフィエフをイメージさせるメインテーマはむしろ好き。

とりあえず、つづきは半年もある。
楽しみに見ていきたい。全22話(予定)。
  
 
http://www.fujitv.co.jp/fumouchitai/index.html

 

不毛地帯 (第1巻) (新潮文庫 (や-5-40))

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