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メアリー・ブレアの色

矢川版アリスを読み返してから、ディズニーのアリスを見た。
いつも思うのだが、50年代のディズニー映画(いわゆるクラシックス)は異彩を放っている。
わたしのすきなディズニーはすべて50年代のもので、小さい頃に風邪をひいて寝込んだりすると、ビデオを見せてもらえるのがうれしかった。
年代順に言うと、

シンデレラ (1950)
ふしぎの国のアリス (1951)
ピーターパン(1953)
わんわん物語(1955)
眠れる森の美女(1959)

の5作品である。
すぐれたミュージカルとしての脚本、セリフのテンポ、なによりオリバー・ウォレスによる音楽* が特徴だが、すべてに参加し世界観を統一しているのが、色彩設計メアリー・ブレアである。
彼女の、色である。


 
彼女の色はとにかく魅力的。多くの色を使用するのは難しいのですが彼女の色使いは楽しいと思わせてくれます。
優しくて強くて上品。 そして影の中には鮮やかな色がちゃんと存在していることを見せてくれています。
私が、影の中にも色があるというような感覚を持ち始めたのは、アニメーションを始めてからずっと後のこと。以前は色指定といっても限られた絵の具の中から選ぶしかなかったのです。でも、20年くらい前からようやく色をつくることができるようになりました。
その頃から意識的に物を見たり、感じたり、考えるようになりました。
影だから黒とかグレーにするのではなく影の中にも色があること、そして、濃い色や鮮やかな色を影の中に持っていこうとそんなふうに思い始めたのです。

以上はこの10月まで開催されていた「メアリー・ブレア展」に寄せられた、ジブリ色彩設計担当アニメーター保田道世のメッセージ(抜粋)。
この成功した展覧会でメアリーの名は一気に広がったが、私自身もI CAN FLYの絵本作家がディズニーのアニメーターだったことをはじめて知り、このひとこそがわたしの色彩感覚を育ててくれたのかと感無量だった。


 
保田さんが「影の中の色」にたとえたとおり、メアリーの色には独特の「にごり」がある。
鮮やかだか上品な色彩のなかに、ひとさじの「にごり」。
わたしは、そこに異国を感じていたように思う。
(なぜ「にごり」が日本のアニメにはなかったのか、というなぞは、保田さんのおかげで解けた。)

昔のディズニー映画や遊園地やそこで買うおもちゃが魅力的だったのは、そういう色でできていたからだ。
それが商業化のなかで消えてしまったいま、魔法がなかば解けてしまったように思えてならない。
遊園地やグッズに夢中でも、ディズニーの古いアニメーション・フィルムを見たことのない若い人は多い。いや、同世代でもたくさんいるだろう。
ジブリの半分でもいいから、金曜ロードショーがディズニーを流せばいいと思うが、たしかに当世風ではないのかもしれない。
日本むかしばなしや、世界名作劇場のようなものだ。

そんな流れでディズニーは手書きのアニメーションをやめてしまったとどこかで読んだのだが、調べてみると新作は毎年出ている。
しかも、今年は『プリンセスと魔法のキス』、来年はRapunzel(原題)とプリンセスもの。
実写ということであれば昨年の『魔法にかけられて』は記憶に新しい――あの色彩は50年代、メアリー・ブレアへのオマージュみたいだし、大注目のティム・バートンAlice in Wonderlandは元ディズニー・アニメーターである監督の悲願でもある。

やっぱり気になるディズニー。
結局のところわたしは、ディズニーの魔法を信じているのだった。

  
 
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