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【Art】魔法使いの工房 | 三鷹の森ジブリ美術館

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日曜日、三鷹の森ジブリ美術館を訪れた。森、とは比喩ではなく、井の頭恩賜公園の広大な敷地の一部。紅葉がはじまったばかりの木々に囲まれた洋館は、そのまま映画のなかに登場しそうな佇まいだった。
ちょうどアドベントのタイミングで、館内いっぱいにクリスマスの飾りつけ。企画展は「クルミ割り人形とネズミの王さま」ということで、得した気分。

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ステンドグラスの玄関ホールから階下へ降りると、ゾートロープや映写機など、アニメーションの歴史としくみを愛いっぱいに展示した「動きはじめの部屋」。ミニシアターの「土星座」では、代表的な短編映画『パン種とタマゴ姫』を鑑賞できた。

これがもう、たまらなくかわいいのはもちろん、たまらなく「西洋」を感じる作品だった。舞台はヨーロッパの農村。ムソルグスキー組曲展覧会の絵』でも知られる魔女バーバ・ヤーガのもとでこき使われるタマゴ姫。ある日、パン種をこねているとそれに生命が宿る。タマゴ姫とパン種は、ともにバーバ・ヤーガの下から逃亡するのだが……という物語が、西洋風景画とバロック音楽を思わせる牧歌的な雰囲気のなかで綴られる。帰宅後、「ブリューゲルの絵をきっかけに、宮崎監督がイメージを膨らませて作った映画」ということを知り納得した。

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『穀物の収穫』(1565)

それにしてもあのバロック音楽が忘れられない。一気に世界観にひきこまれたのはもちろん、エンドロールが出るまでヴィヴァルディか誰かの協奏曲かと思いドキドキした(実際はしっかり、2010年の久石譲作品)。

というのも、 館主である宮崎駿さんがクラシック音楽ファンであることは有名だから。美術館のクライマックスともいえる常設展「映画の生まれる所」、宮崎駿の架空の書斎(まるで「地球屋」に足を踏み入れたような高揚感だった!)に、たくさんのスケッチやスクラップや本や画集や模型やPeaceの煙草とともに積みあがっていたCDのタイトルを、たくさんメモしてしまった。

ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」、ヘンデルの「水上の音楽」、バッハの「マタイ受難曲」や無伴奏チェロ組曲シューベルトに、サン=サーンス交響曲第3番、そしてワーグナーの「タンホイザー」は欠かせない。モンテヴェルディの「オルフェオ」まであったのには感動した。ベートーヴェンヘンデルにいたっては、小さな肖像画まで飾ってあった。昭和のクラシック男子、というかんじでとてもいとおしい。宮崎さんは語る。

パクさん(高畑勲)と僕は民族的なもの、土俗的なものに対する興味が不思議に共通していた。……『魔女の宅急便』をやっているときに、お客さんの老婦人に会ったらこの娘はどうやって挨拶するんだろうって。さあ、困った。英国グラナダテレビの『シャーロック・ホームズ』を観ていて、メイドが立ったままちょこっと膝を曲げるのに出会った。ああ、あれだと思い出した。

――宮崎駿スペシャル・インタビュー「BRUTUS」2010年8月1日号より

わたしがスタジオジブリの作品で愛するのは、昔からこういう西洋の暮らしへの憧れに満ちたディテールだ。


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手書きの解説、「メルヘンのたからもの」といった単語ひとつひとつに、古きよき時代の面影。作品がもつ、せつないまでの「西洋」への憧れがまふしくて、子ども時代の図書館に舞い戻ったような気持ちになった。

あまりにもコマーシャルになりすぎたスタジオジブリだけれど、その魂の根っこにはいまも変わらず憧れがある。それを確認できてほんとうによかった。

美しいこの世界が、次代にもつながっていきますように。

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