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【Movie】映画祭の女王 | 宮沢りえと『紙の月』

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アカデミー賞の季節。ラジオでも語ったジュリアン・ムーア(主演女優賞、3/1放送)や、タイムリーに試写へ行くことができた『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(脚本賞)など、映画ネタが山積している。

今夜は日本アカデミー賞の授賞式、そして祝・主演女優賞ということで、昨年秋の東京国際映画祭のこぼれ話を。

オープニングは1023日、東京・六本木ヒルズで開幕。約370人のゲストがレッドカーペットに登場した。観客として足を運ぶことは多いが、レッドカーペット等の関連イベントは初参加。これがほんとうにおもしろかった! 気合を入れてしっかりプレゼンしようとしている作品は、やっぱり劇場に足を運んで観たくなる。

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なぜ映画祭を開催するのかといえば――これは音楽祭にも芸術祭にも共通することだが――第一にはそのジャンルのファンの拡大が目的のはず。“あえてドレスアップしない”風の若い俳優も多かったが、“こなれ感”が前面に出てしまうと、せっかくのハレの場がだらしのない空間になってしまう、とも感じた。ともにハレの場をつくるという文化の成熟について、とても考えさせられたのである。

 

なんといっても、個人的ベスト・ドレッサー賞は『紙の月』主演の宮沢りえさんだった。吉田大八監督、池松壮亮さんというすてきな騎士たちにかしずかれた、完全なる“レッド・カーペットの女王”。まさに後光がさす神々しさ。

その場を圧倒する自信と輝きが群を抜いていたので、最終日の主演女優賞の受賞も納得である(そして今夜のアカデミー主演女優賞も)。

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『紙の月』はそんな、「映画祭の女王」宮沢りえの主演作。舞台は1994年。銀行の契約社員として働く主婦・梨花(宮沢)は、偶然知り合った大学生・光太(池松壮亮)との時間のために金銭感覚を狂わせ、ついには横領という犯罪に手を染めていく。

この小説の実写化はドラマに次ぐものだが、前作では「なぜ梨花が堕ちていくのか」が謎のままだった。その点を宮沢さんは、モノローグが一切ないにも拘らず、その圧倒的な存在感――どこか尋常じゃない危うい雰囲気だけで説明してしまう。こんなにすごい人だったんだ、と驚愕した。

41歳の彼女が、いわゆる美魔女のような人工的な美しさでないところにも、大きさと自信を感じた。池松壮亮も夫役の田辺誠一も、同僚の大島優子ら女優たちもあてがきのように役にハマっていた。

桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督作品という時点で期待していたことだが、冒頭の讃美歌から世界に引き込まれる、完全なる音楽“的”映画でもあった。

吉田監督の映画では、「その場面で音楽が流れること」にきちんと意味がある。今作での音楽は、梨花の感情の高まりとイコール。何かに引き寄せられるように光太と恋に落ちるときの音楽も、セックスを重ねるうち無音になっていくのも、ともに印象的だった。

若い男、そして横領した巨額の富で美しくなっていく梨花。一見すると悪女だが、不思議と清々しい。聖と俗が入り混じった物語の果ての、生命力を感じる幕切れも忘れられない。