読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Salonette

スキの情熱で世界を変える!――高野麻衣 公式ホームページ

スキの情熱で世界を変える! —— 高野麻衣オフィシャルサイト

【Movie】1920年代、コート・ダジュール、そして恋と音楽 | 『マジック・イン・ムーンライト』

f:id:otome_classic:20150410225117j:plain

ウッディ・アレンが南仏を舞台に撮りおろしたロマンティック・コメディ。

それだけで、多幸感の80%以上が保障されている。

ウッディといえば最近では、虚栄に囚われ現実逃避する女の生きざまを描いた『ブルージャスミン』で話題と衝撃を与えてくれたが、「次回はいつもの軽妙洒脱ロマコメ路線に戻りまーす」と聞いてほっとした映画ファンも多いだろう。最愛ウッディ映画=『世界中がアイラヴユー』のわたしも同様だった。

そのうえ、主人公のこやかましそうな英国人マジシャンをコリン・ファースが演じるという。これ以上の安心感はないではないか。

f:id:otome_classic:20150410225404j:plain

舞台は1928年。魔法や超能力を絶対に信じないマジシャンのスタンリー(ファース)が、ある大富豪が入れあげている占い師の真偽を見抜くよう依頼される。打倒ペテン師に燃えてコート・ダジュールの別荘地に乗り込むスタンリー。そこで待っていた占い師は、チャーミングなアメリカ娘のソフィ(エマ・ストーン)だった。まったく見破れないソフィの霊能力に敗北したスタンリーは、人生観を根底からひっくり返されたうえ、不覚にもときめきまで覚えてしまう。

恋のかけひきというより、腹のさぐりあいをする男女のかけあいは、おなじみのウッディ・アレン節。小粋なラストにも胸がはずむ。

テーマは「人生におけるマジック」。ウッディおなじみのペシミスティックな現実主義と、彼が信頼する魔法や一瞬のときめき(あるいは、それを提供するための装置としての映画)のバランスが美しく、心おきなくウッディ・ワールドにひたることができた。わたしはウッディや、故エリック・ロメールの描く「ちょっとだけファンタジー」の美しい世界が好きだとあらためて思った。

f:id:otome_classic:20150410225048j:plain

なによりも眼福なのは、紺碧の海(コート・ダジュール)と美しい庭園が広がる別荘地のロケーションである。アンティーブ岬やニース、カンヌといったといった海岸沿い邸宅を、7月の南仏の陽光がまばゆく照らす。撮影監督は『ミッドナイト・イン・パリ』『ローマでアモーレ』のダリウス・コンジだ。

スタンリーとソフィが突然の雷雨に雨宿りする天文台(ザ・少女漫画クラシック!)は、モン・グロの頂上にあるニース天文台エッフェル塔の設計者ギュスターヴ・エッフェルがドームを設計し、1887年に建設された。ここから覗く月がたまらない。

もちろん、1920年代のアール・デコなドレスからも目が離せない。資料によると、登場する衣裳のほとんどが当時のオリジナル。ファンタジーを“信じる人たち”には白やパステル、“疑う人たち”には暗い色というコントラスも、風景と溶け合って妙なる調和を生み出している。 

f:id:otome_classic:20150410225331j:plain

特筆すべきキャラクターは、ル・ムイのルエ城のワイン畑で撮影された邸宅で暮らすヴァネッサおばさん(アイリーン・アトキンス)。南仏の邸宅で優雅な暮らしをする美しき英国老嬢である。甥っ子であるスタンリーの毒舌を軽くいなす様子や、垣間見える若き日の悲恋。「なんでもお見通しよ」という立ち位置がぞくぞくするほどすてきだった。

最後に音楽ネタも。冒頭ベルリンでのスタンリーのマジックショウは、クラシック名曲のオンパレード。その後のキャバレーでは、ウテ・レンパーが妖艶に歌を披露している。コート・ダジュールに登場すると、音楽は一気にジャジーに。神経質なスタンリーが、ベートーヴェンとともに眠れなくなるくだりも好きだった(※キャラクターの作曲家使い分けにおける高野説がまたしても立証された)。

音楽オタクとしても楽しめる、ウッディの映画にまたしてもアイラブユー!

magicinmoonlight.jp

 

©2007-2017 Salonette All rights reserved.