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【Music】宗教改革とわれらのコラール | バッハ・コレギウム・ジャパン「ルター500プロジェクト」

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バッハ・コレギウム・ジャパン「ルター500プロジェクト」のスタートにあたる、第113回定期演奏会へ(6/6 東京オペラシティ コンサートホール)。

マルティン・ルター宗教改革は2017年でちょうど500周年。ドイツを中心にしたヨーロッパ各地で、祝賀ムードが盛り上がってるのだという。日本が誇るBCJでは、宗教改革時代の音楽とJ.S.バッハの「コラール・カンタータ」を組み合わせた、全5回のシリーズでこれを祝う。

コンサートの冒頭、BSJの創設者・鈴木雅明はこのように語った。

宗教改革と音楽にどんな関係が? とみなさん思われるでしょう。じつは、ルターはカトリックの修道士であるばかりでなく、音楽家でもありました。そしてカトリックと袂を分かち『新しい礼拝』を決めたときに、会衆が声をあわせて歌うことによって、神様に直接語りかける手段を与えようと考えたのです。そうして生み出されたのが、私たちが『コラール』と呼んでいる、賛美歌でした」

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(c) Marco Borggreve

これは不明だった。宗教改革といえば「蒙昧な中世の教会制度を覆す!」みたいなルネサンス的運動とイメージしがちなのだけれど、それだけではない。「聖書を読もう」とドイツ語翻訳したことで印刷技術を進化させ、賛美歌までつくった。免罪符がまかり通っていた時代に、「ただお説教を聴くだけではなく、みんなで参加しよう」という「参加型ミサ」がどれだけ革新的だったことだろう。

ルターの賛美歌は、信仰者の血肉となり、のちに幾千幾万の美しい作品を生み出す礎となった。そのひとつの例がバッハ、というわけだ。

コンサートの序盤は、ルターの「音楽的な右腕」だったというヨハン・ヴァルター(1496-1570)のコラールと、その200年後のバッハによるオルガン編曲版を交互に聴く、というおもしろい趣向。合唱にトロンボーンコルネットが寄りそう響きがまるで中世の絵画のようだった。

つねづね礼拝堂のようだと感じていたタケミツメモリアルに降り注ぐパイプオルガンの音も忘れがたい。オルガン独奏は鈴木優人。クリスマス以来の彼のオルガンの揺るぎない躍動感に、200+300=500年、という年月のなかでわたしたちがえた「自由」を思った。

その後のカンタータも圧巻だったが、とくに心奪われたのが、第7番「キリストわれらが主ヨルダン川に来たりたもう」。6月24日の「聖ヨハネの祝日」のために書かれたものだが、ヨハネがイエスを洗礼したヨルダン川の流れを弦楽器のたゆたうような音楽が奏でる、ヴァイオリン協奏曲のような耽美な曲だった。

藤崎美苗(ソプラノ)、青木洋也(アルト)、ダン・コークウェル(テノール)、加耒徹(バス)というソロ歌手陣もすばらしかったが、第5曲で加耒さんがイエスを「演じた」瞬間、確実に体温が上昇したことは書き記しておこうと思う。彼は普段、とてもさわやかなルックスで人気なのだが、役に没入したときの別人のような迫力に定評がある(私の中で)。

「全世界に行ってすべて異邦人を教えよ!」

イエスがのたまったときの王者感たるや。これこそ華というもの。声量という意味では他のベテラン勢に及ばないけれど、つくづく先が楽しみな人だと感じた。

みんなで歌ったり、すばらしい旋律や声にドキドキしたり。

音楽がもたらす快楽は信仰の喜びとイコールで、それはたぶん、ルターやバッハの時代も、現在も変わらないはずだ。宗教改革がたまらなくいとおしく感じられた、6月の午後だった。

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