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【Art】菱田春草、人気のひみつ | 明治東京恋伽 × 伊勢丹 「めいたん呉服店」

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©魂依保存委員会

伊勢丹新宿で開催中の「和の事はじめ×めいたん呉服店」へ(7/2)。

お香や書道などの和文化の楽しみ方を紹介する「和の事はじめ」と、今夏劇場アニメ公開が話題の人気乙女ゲーム『明治東京恋伽』(通称:めいこい)がコラボ。あの伊勢丹で、泉鏡花(CV.岡本信彦)、菱田春草(CV.KENN)ら人気キャラとともに、おしゃれな「和の事」を体験できるというイベントだ。

きっかけは、美術ブロガーTakさんからのトークイベント開催のお知らせだった。テーマは先日ご紹介した「画鬼・暁斎」展にちなんで、「明治時代のアートシーン」。「めいこい」ファンならずとも見逃せない、と出かけたものの、すっかり「めいこい」が気になる存在になってしまった。

会場は夏祭りの雰囲気。

浴衣や和小物はもちろん、手ぬぐいやふろしき、うちわ、お香に飴細工といった和のブランドが出店している。松栄堂による「匂い香つくり教室」や有文堂による「和綴じ製本教室」、茶道や書道、生け花などの体験もある。

各ブランドが「めいこい」にちなんだグッズ展開をしているのだが、明治の雰囲気のおしゃれでかわいいものが多い。たとえばヒロイン芽衣ちゃんの着物とおそろいの矢絣文様の浴衣や和小物(写真上/鴎外セレクトコーデ、ちなみにCV.浪川大輔)。

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菱田春草の人気の絵画『黒き猫』をあしらった扇子も。春草セレクトコーデがまた、ものすごくかわいい。

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©魂依保存委員会

君はどうやら黒猫が好きみたいだから。だってこの前、僕の絵から抜け出した黒猫を一所懸命探してくれただろう。だからこの帯が気に入るかなと思って。――菱田春草

帯に日本画家の絵をあしらう、というのはありそうだけれど、その画家をモデルにしたアニメキャラのグッズとして(世界観も含めて)作られたのだと思うと、さすがの伊勢丹クオリティに唸ってしまう。

(「催事場どっちですか」ときいた店員さんが慣れた様子で「めいたんですね」と即答してくれたので、しっかり新規客を獲得しているのもよくわかった!)

ちなみに、春草は鏡花と並ぶ人気キャラ。昨年秋に東京国立美術館で開催された「菱田春草展」が大盛況だったひみつは、猫だけでなくこの「めいこい」なのだという。

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名刀を擬人化し社会現象になっている「とうらぶ」こと『刀剣乱舞』の影響もはかり知れないらしい。アパレルはもちろん、美術界はその事実を柔軟に認知し、バランスをもっておしゃれにとりいれる。それって驚きだし、すてきな事実だ。

というわけで、件のトークイベント。平日なのに、会場にはほぼ女子ばかり30人ほどが集まっていた。

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東京美術学校(現・東京藝術大学)が設立された「明治のアートシーン」。教諭就任を依頼されながら開校目前で亡くなった河鍋暁斎と、同校の2期生だった菱田春草の関係性や、それぞれの作風、時代背景は興味深いものだった。

三菱一号館美術館学芸グループ長・野口さん(左)は、暁斎の専門家。暁斎愛にあふれて暁斎のことばかり語りそうになるのだが、たまにはっとして、猛勉強してきたという「めいこい」エピソードに戻るのがチャーミング。野口さん曰く「めいこいは世界観がきれいなゲーム」だそう。

「めいこい」のオープニングの舞台は、暁斎の弟子ジョサイア・コンドルが設計した鹿鳴館。そこでまずは、暁斎展の冒頭にも展示されている「鹿鳴館の手摺」の紹介から。聖地巡礼にうってつけだ。

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暁斎の世代にとっての日本画の本質「線」と、春草の世代が試みた「空気感」の話がとてもおもしろかった!

たとえば上の絵、暁斎は洋装の男女とパリのオペラ座を描いているにかかわらず、はっきりと日本画に見える。これは暁斎が「線をいかに引けるか」に心血を注いでいたからだという。ドレスのレースも、ガルニエ宮のレンガも、すべて緻密な線でできている。

一方で、春草の絵はふわーっとしている。 

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猫の毛のあたりを見ればよくわかるが、線ではなく、筆のタッチで輪郭を――なにより「空気を描く」ことを目指した。同時代のヨーロッパの印象派ともリンクしている。

じつは岡倉天心からの課題だったのだそうだが、前世代を乗り越えようとした春草や、盟友の横山大観は悪評にまみれた。その絵は「朦朧体」と呼ばれ、否定されたまま、春草は36歳で早世する。

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大観がその後、20世紀の巨匠(=富士山の人)として長寿を全うしたことを考えると切ないが、その短い人生が春草のイメージを形成しているのは間違いない。

ちなみに私は、ふたりのショパンとリスト的立ち位置を知って震えた。春草と大観の美術学校時代など、いろいろ知りたくなる。いまは音楽学部になっている芸大の赤レンガ棟は、ふたりの学生時代にもあった聖地だそうだから、今度訪れてみようと思う。

「めいこい」の春草と野口さん、Takさん。浴衣がお似合い。

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美術トークはもちろん、会場にかけつけ必死でメモをとる「春草ファン」(!)の女の子たちの熱気を肌で感じたり、仲よくなってゲームのお気にいりポイントを教えてもらったりして、多幸感あふれる取材になった。

「春草が好きになって、去年は東京と茨城の美術館をめぐりました」

「(グッズの)ウサギは、鏡花くんのマスコットです。実在の泉鏡花もウサギのものを集めるのが趣味だったので、それにちなんでるんです」

こんなことばっか覚えていくよね、と笑う彼女たちに思わず、

「すごいよ!すごい財産になるよ!」

と興奮してしまった。まさに「スキ」がきっかけで歴史や美術や和文化に出会い、夢中で知識を吸い込んでいく女の子たち。その記憶は、彼女たちの人生をどれほど豊かにすることだろう。

音楽にもきっと、同じことができる。

大いなる希望を、たくさんもらった一日だった。

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