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【Event】音楽が恋の糧ならば | 《シェイクスピアの幕間》 ~霧とリボン企画展「英国文学十四行詩集 vol.2」

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今宵は十二夜(Twelfth night)。

十二夜とは、クリスマスから12日目(1月6日)に東方の博士がベツレヘムの幼子イエスを訪ねた故事から、それを祝う顕現日のこと。エリザベス朝では、前夜からはなやかな行事がおこなわれ、人びとはお祭り気分に酔った。

この写真は、そんな祝祭気分に満ちたシェイクスピアのとりかえばや劇『十二夜』の主人公シザーリオ(男装のヴァイオラ)に扮したチェリスト小林奈那子さんと、シザーリオに恋してしまう令嬢オリヴィア気分の私。

美しい初冬の午後、吉祥寺の住宅街にひっそり佇むギャラリー「霧とリボン」で開催された、サロン・コンサート《シェイクスピアの幕間》の一幕である

 

シェイクスピアの幕間》は2016年12月、シェイクスピア没後400年を記念して開催された霧とリボンの企画展「英国文学十四行詩集 vol.2」の“幕間”に行われた。

ひとりの作家を詩の1行に見立て、14人で一篇の十四行詩集(ソネット)を奏でるこの美術展、あらためて振り返ってもじつにこだわりぬかれた構成になっている。

シェイクスピアズ・シスターズ(11/27-12/3)

アドヴェントの第1主日である11/27から第2主日前の12/3にかけて行われた前期展示《シェイクスピアズ・シスターズ》のテーマは、シェイクスピアの戯曲や誌に登場する「女性」たち。

会期中には個性豊かな7人の作家たちが、絵画やカリグラフィ、服飾などでシェイクスピアの世界を表現し、菫色の小部屋が淡い少女の夢のように彩られた。

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シェイクスピアの幕間(12/11)

そして、第3主日の12/11に行われたのが、サロン・コンサート「シェイクスピアの幕間」である。

サロンの創造主であり完璧な美の守護神たる「霧とリボン」デザイナー、ミストレス・ノールが作り上げたSHOP 2Fの応接間(通称「221B」)にて、英国の紳士クラブという知的な愉しみを、日本の淑女たちで再現しようという意欲的な試み。

私は2014年6月の「バルテュスの少女たち、音楽の少女たち」につづいて、2度目の女主人役をさせていただいた。

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しかし、なんといっても今回の主役はシザーリオこと、チェロの小林奈那子さん。

221Bはこの日も、蔵書も調度も食器もそこに盛り付けられたお菓子もお茶も――なにより音楽も匂いも照明も――なにもかもが心地よく、五感を研ぎ澄まされた。

しかし、ミント色のカーテンを透かした初冬の光と色彩のなかで聴いた、チェロの音のすばらしさといったらなかった!

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シザーリオ(ヴァイオラ)、あるいは吟遊詩人。#cello #classicalmusic #shakespeare #sonnets #霧とリボン #小林奈那子

奈那子さんは今回のコンサート期間中、鳶色の肌も美しい愛器をセバスチャン(ヴァイオラの双子の兄の名)と命名。開演前のリハーサル&撮影会では、吟遊詩人ダウランドを気取ったポーズも披露してくれた。

シザーリオが奏でるチェロの音が階下まで漏れ聞こえ、昼の、あるいは夕暮れの光が差し込むサ221Bへ現れる淑女たちの感動といったらなかった。

執事役のノールさん、ふみさんが給仕してくださるハーブコーディアル、紅茶、フローズンヨーグルトやケーキ。アンティークの食器で登場するメニュの美しさに、今回も、一つ一つ歓声が上がる。

定刻になると、私がこの日のために訳した『ソネット』18番「君を夏の日にたとえようか」を朗読。 「美青年」の美を讃える「私」=シェイクスピアの妖しく美しい恋情を、「シザーリオ(ヴァイオラ)」を男と信じ恋するオリヴィアに重ねた。

永遠の時のなかで  君は時と結びつく

人が息をし  目がものを見る限り

この詩は生き  君に命を与えつづける

プロローグの歴史解説、そして『ロミオとジュリエット』第1幕第5場「卑しいわが手がもしもこの」の朗読あと、トマス・モーリーの牧歌的なラブソングを引用した軽やかなプレリュードとともに、満を持して小林奈那子の処女作「無伴奏チェロのための5つの小品《追憶―Reminiscence―》」が初演された。

1. プレリュード Prelude

2. ラクリメ、またはアルマンド Lachrimae Antiuae or Allemande

3. ロビンのメヌエット Menuet "Robin"

4. アイアンビック・ペンタミター Iambic pentameter

5. 来たれ、死よ Come away, death

最後の「来たれ、死よ」は、『十二夜』第2幕第4場で道化師フェスタが歌う切ないラブソング。ここでも『十二夜』は、「音楽が恋の糧」であることを教えてくれる。

十二夜』ほど音楽に満ちたシェイクスピア劇はないようにも思う。ヴァイオラ(シザーリオ)→オーシーノ公爵→オリヴィア→シザーリオ(ヴァイオラ)による完璧な恋の三角形。恋の国イリリアでは、歌も、酒も、恋も、悪戯も、すべてが許される。

オーシーノがふともらす「甘い切なさ」(sweet pangs)こそがこの劇、そしてコンサートの隠れたテーマだった。

この日のために我々が準備したシェイクスピアの言葉と音楽についての詳細は、あらためて、ていねいにご紹介したいと考えている。

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シェイクスピアズ・ブラザーズ

「英国文学十四行詩集 vol.2」の大トリを飾るのは、アドヴェントの第4主日をはさんで行われた後期展示《シェイクスピアズ・ブラザーズ》。テーマは前期と対をなす、シェイクスピアの戯曲や誌に登場する「男性」たちだ。

またしても個性豊か――それなのに、打ち合わせをしたかのように統一感ある7人の、モノクロームシェイクスピアの世界だった。

菫色の小部屋に入室した瞬間に、ため息。

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ハムレットマクベス、オセロー、アドーニス、そして『ソネット』の美青年……美しきシェイクスピアの兄弟たちの眼差しに、「これこそが私の美の世界!」と思いさだめた。

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美しいものへの愛を共有することは、なんて幸福なことだろう。

美しいお菓子やドレス、男性の話がきっかけであっても、知性ある女性たちのおしゃべりはいつも文化のあり方にまで飛躍していく。わたしはその瞬間がほんとうにいとおしい。

遊び心という名の洗練。自由につなぎあわせ、分かちあうこと――これこそ、わたしが目指すクラシック音楽のあり方だと断言できる。西洋音楽受容史の新しい視座と合わせ、大いなる力を得た、すばらしき日曜日だった。

上は、前回のサロンのあとで書き留めた所感。今回もまさに、おなじ思いを得たのだ。

シェイクスピアズ・ブラザーズ》へは、西からきていた長年の美の同志を案内した。私がノールさんに出会う以前に、京都の恵文社でルネ・ヴィヴァン「菫色の文法」を手にとっていたYちゃん。

念願叶いSHOPを訪れた彼女が選んだのは、私と色違いのリボンの指輪に、おそろいのジュリエットのブックマーク、そして紙物をいっぱいつめこんだ妹さんへのクリスマスプレゼント――友人の買い物をみて胸がいっぱいになるのは、はじめての経験だった。

20日の最終日には、敬愛すべき《シェイクスピアズ・ブラザーズ》の作家たちとクロージング・パーティーも。

讃美歌に、キャンドルの上昇気流で合唱団がくるくる回るクリスマス・ピラミッド。声がかれるほど笑ったおしゃべりに、ローズ・ベーカリーの夜食。英国旗を掲げたモンブランの背景、アイリーン・アドラー風に撮っていただいたお気に入りの1枚とともに、もう懐かしく思い出す。

なんて最高のクリスマス・シーズンだったことか!

Come hither, boy. If ever thou shalt love,
In the sweet pangs of it remember me.
(さあ、こっちへおいで。もしおまえが恋をしたら、その甘い切なさのなかで、どうか俺のことを思い出して。)

 

ご来場いただいたすべてのみなさま、“わが愛しのシザーリオ”奈那子さん、そしてミストレス・ノールに愛をこめて―― 

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写真:Mistress Noohl(ロゴ入り分)、高野麻衣

 

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